Up 計算 作成: 2025-09-09
更新: 2025-09-11


    人間脳の場合,暗算は計算過程が保持できないので,難しい。
    筆算は,計算過程が保持されるので,アルゴリズム通りに進めば,正解に至る。

    Transformer 脳も,これと同じである。
    同じ桁の2数のかけ算を実験したところ,
      暗算は,3桁を超えると間違う。
      筆算は,ロジックに正しく従うため,正解に至る。

     ・実験「かけ算の暗算」
     ・実験「かけ算の筆算」



    実験での「暗算」と「筆算」の意味は:
      暗算 : 与えられた2数に対し,その積の値だけを返す
      筆算 : 計算過程 (→ 積の値) を「テクスト生成」する。

    これは,それぞれつぎの構造になる:
       暗算:

       テクスト   数の文字列  <eos>
                ↑     ↑
          │ 処理  │ 処理  │
          └─────┴─────┘
               <処理>

       筆算:
            計算過程 (→ 積の値) を書く
       テクスト   トークン ・・・  <eos>
                ↑        ↑
          │ 処理  │  ・・・   │  │
          └─────┴──・・・───┘
               <処理>

    ここで,縦線で区切った「処理」は,トークン追加アルゴリズムの1回処理。
    これが<eos>まで続いて,<処理>になる。
    <処理>は,テクストに対応して決まる。
    この意味で,open-ended である。
    実際, 「暗算」実験では Transformer 脳はこれを暗算に使い,「筆算」実験では筆算に使ったというわけ。


    暗算の不安定と筆算の安定は,つぎのようにまとめられそう:
    • 暗算
        計算過程の保持を,キャッシュでやる。
        保持・参照の困難は,キャッシュ容量の限界の現象。
    • 筆算
        計算過程の保持を, 「テクスト生成」でやる。,
        テクストの参照を,計算過程の参照にする。