Up 「アイヌヘイト」: はじめに 作成: 2117-01-22
更新: 2117-01-22


    「アイヌヘイト」は,「人種差別」ではない。

    「アイヌ特権」──行政の "アイヌ" 特待施策──に対するヘイトである。
    これは,"アイヌ" 優遇措置に対する<ひがみ>である。
    よって,"アイヌ" 優遇措置をひがむことになる者が,「アイヌヘイト」の主体である。

    どのような者が,"アイヌ" 優遇措置をひがむことになる者か?
    自分は行政からかまってもらえない──冷遇されている──と思っている者たちである。


      萱野茂『アイヌの碑』(朝日文庫) , 朝日新聞社, 1980.
    今まで何かと差別されてきた先住者のわたしたちアイヌの生活の向上のために、思い切った政策を実行して欲しい。
     家を不自由している人には家を建てて入れること。
    向学心に燃えても家庭の経済的事情で進学できない人には国費を出してやること。
    数の少ないアイヌだけでは国会議員、道会議員を選出することができないので、それを選出できる法律や条例をつくること。
    アイヌ語を復活させ、アイヌ文化の大切さを教えるため、希望する地域にはアイヌ語教育をする幼稚園、小・中学校、高校、大学を設置する。
    そして、これらに必要な経費は国や道が出す。
    元々の地主に今まで払わなかった年貢を払うつもりで出すこと‥‥‥

    "アイヌ" が,
      俺の先祖は地主だった。だから子孫である俺たちに年貢を払え
    の論法で,
      「家を建てろ,教育費を出せ,‥‥‥
    の要求をする。
    政治が,この要求に応じる。
    要求に応じるその形は,「公共事業」である。
    この公共事業を狙って利権グループが形成される。

    このしくみに対し,若い生活困窮世代は,<ひがみ>の感情をもつ。
    さらに,「ふざけんな!」の声を外に発信する者が,現れる。
    (いまはネットがあるので,これができる。)

    しかし,如何せん,教養が無い。
    ものの言い方を知らず,「ヘイトスピーチ」を表現にしてしまう。

    "アイヌ" からは「アイヌ差別」と攻撃され,マスコミからは「人間のくず」扱いされる。
    利権グループやこれと結託している政治家は,利権構造がばれては困る者たちである。
    彼らは,「アイヌ差別」「人間のくず」キャンペーンを,幸いとする。

    これが,ヘイト感情にさらに油を注ぐ。


    貧しさそのものは,人に殺人を犯させない。
    貧しさが人に殺人を犯させるときは,<ひがみ>が間にはさまる。
    民族抗争,エスノサイド,内戦は,つねに《<ひがみ>が殺人を犯させる》である:

      貧しい国に,「援助」する。
      その「援助」は,「国の代表」を任ずるグループに,届けられる。
      彼らは,この「援助」を私物化する。
      これに対し,他の者がひがむ。
      こうして,抗議行動が起こり,これに対し鎮圧が行われ,衝突のエスカレートの螺旋運動に入り,内戦になり,虐殺が繰り広げられる。


    「ヘイトスピーチ」は,「アイヌ利権」の鏡である。
    「ヘイトスピーチ」を「人間のくず」と断ずるときは,「アイヌ利権」を「人間のくず」と断ずるのでなければならない。
    「アイヌ利権」を「これの理を見るべし」とするときは,「ヘイトスピーチ」を「これの理を見るべし」としなければならない。

    しかし,この論を立てる者はいない。
    ひとは,正義キャンペーンには,係わるまいとする。
    面倒臭い状況を招くのが,おちだからである。
    そして,正義に異論を立てるのには,技術が要る。

    「この論を立てる者はいない」と言ったが,まれに出てくる。
    「アイヌ学者」では,河野本道がいる。
    思想家だと,なんといっても吉本隆明である。
    吉本隆明は,人権イデオロギーを敵と定めた。
    実際,人権イデオロギーの者は,みな,吉本隆明が嫌いである。

    吉本隆明は,社会の<最悪>を,人権イデオロギーに見た。
    「ヘイトスピーチ」は,人権イデオロギーの虚構の直感・直観である。
    両者は,本質のところでは通底する。
    違うのは,アタマである。


    「アイヌヘイト」は,「アイヌ利権」の直感・直観である。
    「アイヌ利権」の直感・直観が,「アイヌヘイト」である。
    「アイヌヘイト」は,「人間のくず」で片付けてしまってはならない問題である。
    この問題には,重要な<理>が含まれている。
    「アイヌヘイト」は,まっとうに主題化すべき論題である。

    こうしてここに,「アイヌヘイト」の立論を開始する。