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菅江真澄 (1791), p.567
‥‥ ハシユ [入れ墨] せし青色のうすらかになれば、女ども寄つどひ、互にパシユして ‥‥ 唇、かひなを月ごとに刺し、血をあやなすゆへにや、血のめぐりたゆたふ病もな(無)う、
男女骨節疼痛し、あるは屈伸しがたきにも、エビラ(刀)して割き、血を流しぬ。
‥‥
或傷寒感冒のいとおもげなるをば、鍋に湯をかへらかし、やまふど(病人)を草席てふものもて、むくろを巻縛へ、アツシとりおほひ、鍋の上に木を亘し草をしき、たゝしめてこれを□(火+丞)て愈しぬ。
眼わづらふものは、シキレベニとて黄檗の皮を水にひたして、ひたに洗ひ、あるは、艾蓬(エモキ)の青葉を焙て睚をおさへ、
腹やめば、三椏五葉(とちばにんじん) の根を採来て煎て飲み、‥‥
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Munro (1938), p.180
普通の病気にかかった時には、アイヌの人びとは多くの薬草の中から効き目のあるものを選んで用いています。
ある薬草はある特定の病気に効き、またある薬草はある病気には不思議なほど効きめがあるとされています。
しかし極めて重い病気にかかった時には、それが肉体に関する病気であれ精神に関わる病気であれ、年を取った人々はすぐにその病気の原因が性悪な悪霊の仕業であると判断します。
このような悪霊を、人々や村やその他の物品から追い払ったり寄せ付けないようにするためにお祓いが行われます。
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- 引用文献
- 菅江真澄 (1791) :『蝦夷迺天布利』
- 『菅江真澄集 第4』(秋田叢書), 秋田叢書刊行会, 1932, pp.493-586.
- Munro, Neil Gordon (1938) : B.Z.Seligman [編] : Ainu Creed And Cult, 1962
- 小松哲郎[訳]『アイヌの信仰とその儀式』. 国書刊行会. 2002
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