アイヌ料理は,現代人の口には合わない。
即ち,おいしくない。
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Siebold (1881), p.85
アイヌは、一種のスープを主食としており、鹿や熊やほかの野獣の干した肉か、もしくは、その新鮮な肉をいろいろな野菜や根菜といっしょに茹でて、スープを作るのである。
このスープは、一日二回、すなわち朝と晩に食べる。
川か海の岸に住んでいるアイヌは、干した魚も新鮮な魚も喜んで食べるし、それに必ずたくさんの酒も飲む。
和人を通じて入手する米は、アイヌの食べ物の中では、きわめて副次的な役割しか演じない。
彼らは稗のほうが好きであり、いくつかの種類を自分で作っている。
貝やカニからも料理を作るが、調理法のせいで、食欲をそそるものではない。
お茶は、和人によって初めてもたらされた。
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日本の芋もヨーロッパの芋も、蝦夷で豊かに実り、アイヌには人気がある。
揚げ物には、鰯の一種の油、または鹿や熊の脂も使われる。
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Batchelor (1901), pp.182-186
アイヌの食べ物は、どんな場合にもヨーロッパ人が好むものでないが、ちゃんと調理されれば、危急(ピンチ)の場合には歓迎されなくはない。
たとえば新鮮なサケ、タラ、シカの肉、クマの肉、豆、アワ、ジャガイモ、エンドウ豆は、正しい仕方で料理されると、それ自体はすべておいしい。
しかしアイヌは料理の仕方を知らない。
彼らは、よく乾燥してない魚で強い味つけをしたシチューが大好きだ。
ほとんどあらゆる種類の食べ物はシチュー鍋に投げ込まれ、少なくともわれわれの味覚によると、そこで完全に台なしにされる。
しかし彼らの食べ物は必ずしもこのような仕方で料理されるのではない。
というのは、魚はときどき火のまえであぶられ、ジャガイモは炉の灰のなかで焼かれるからである。
空腹な人には、このような物は、おいしく楽しい食事になり得る。
彼らは、サケ、マス、若いサメ、メカジキ、クジラが非常に好きだ。
また肉については、クマの脂肪と骨髄、シカの腰の肉、ウマか去勢した牡ウシの内臓を含むあらゆる部分が好きである。
海草、いろいろなハーブ、ある種のユリの根、多くの水草、ギョウジヤニンニク、およびエゾネギが、野菜として用いられる。
他方、ライチョウ、野生のガチョウおよびアヒルは、猟の獲物である。
カタクリの根を掘り、だんごにして、食べ物として用いることは、さきの章で述べた。
同じことは、アイヌがトゥレプ turep とよぶオオウパユリにもいえる。
というのは、人々はこの植物の球根を食品として広く使うからである。
彼らはそれをつぎのように調理する。
球根をよく洗ってから、それを臼のなかで生の状態で砕く。
粉末、あるいはより微細な部分──それはイルプ irup [かす、粉] とよばれる──は、より粗い部分から分離され、天火で乾燥される。
食べるときには、これは一般に粥状にされて、粟か米とともに煮る。
より粗い部分──それはしばしばシラリ shirari とよばれる──は、すぐに煮、それから再び砕き、桶に入れて、分解させる。
徹底的に発酵したとき、それを再び煮、砕く。
その後、それを真中に穴のある大きなだんご──それはオントゥレプ onturep、あるいはトゥレプ・アカム turep-akam [アカム=円盤、あるいはリング] とよばれる──にし、ぶらさげて乾燥する。
食料として必要なとき、アイヌはそれを粟の鍋に投げ入れて、それらを煮る。‥‥‥
アイヌがノヤとよぶヨモギの茎と葉は、早春にそれが非常に若いときに、食料としても用いる。
それらは摘み取られ、まず煮てから、つぎに木の臼でよく搗き、最後にだんごにし、将来使うために乾燥させる。
しかし最初に粟か米と一緒に搗いてから、かなりの量を直ちに食べる。‥‥‥
その年のもっと後で、この植物が古くなると、(茎なしで) 葉だけを摘み、その葉を将来使うために乾燥させる。
栗もまたアイヌの間では、重要な食料である。
彼らはそれをいろいろな方法で調理する。
そのなかでお気に入りの方法は、それをよく煮、それから皮をむき、それを砕いて、ねり粉にすることである。
その後、それを粟か米と一緒にもう一度煮て食べる。
砕いた栗をサケかマスの卵と混ぜ、それらを一緒に煮るのが、非常に美味だと考えられている。
もう一つの方法は、栗を動物の脂肪とマッシユ(ドロドロ) にすることである。
ときどき栗を焼いて食べるが、その場合には食事としてではない。
栗のこの調理法は、なにか他のものよりは、楽しい気晴らしとみられている。
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引用文献
- Siebold (1881) : 原田信男他[訳注]『小シーボルト蝦夷見聞記』(東洋文庫597), 平凡社, 1996
- Batchelor, John (1901) : The Ainu and Their Folk-Lore.
- 安田一郎訳, 『アイヌの伝承と民俗』, 青土社, 1995
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