Up アイヌ使役に威嚇を用いる 作成: 2019-01-01
更新: 2019-02-27


    和人にとって,異文化のアイヌは扱い(にく)い労働者になる:
      串原正峯 (1793), pp.488,489
    ((性))質正直なるもあれとも、交易に馴れたる蝦夷は偽謀の事あり。
    一躰其((性))勇奸にして直ならず。

      東□元稹 (1806), p.37
    元来山海獵より外に産業なく、又欲情も深からず。
    偃鼠(えんそ) [もぐら] の如く腹に満て飽のみ。
    されば性魯鈍にて、小兒のごとし。

      東□元稹 (1806), p.38
    蝦夷人の性甚だ魯にして、恩をわすれ、しかも恨をいだくに惠を以てすれば(おこた)りすさみ、暴を以てすれば隨がはず。
    是事服事せしむる事又難し。

    アイヌを労働力として使うには,手間がかかる。
    この手間を面倒ないし 遅鈍と思うとき,手っ取り早いやり方として,威嚇を用いる方に進む。

    経営の苦しい運上屋は,この趣きになる。
    即ち,<脅しを用いて人を働かせられる者>をとり揃えるところとなる。
      高倉新一郎 (1959 ), p.171
    ‥‥‥ 場所請負人の出先きの者の質の悪さ ‥‥‥
     「 支配人と唱候ものは、漁方番人と唱候ものより成上り、番人は場所働方のものより見立られ候趣に相聞、
    右等の内には無懶の博徒、帖外者と唱候類、父母親戚に疎まれ、当分糊口の為立入、追々場所馴侯に随ひ夫々頭分に相成居候者も有之」
       (掘・村垣意見書)
    といった工合であったから、蝦夷に対する態度もひどかった。

    一般に,経営の苦しい企業は,(なり)振り構わぬ(てい)になる。
    人使いも,このようになる。
    人使いの方法は「アメとムチ」であるが,「ムチ」の方が速効的に見える。
    そこで,形振り構わぬ人使いは,「ムチ」になる。


    引用文献
    • 串原正峯 (1793) :『夷諺俗話』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻 探検・紀行・地誌 北辺篇』, 三一書房, 1969. pp.485-520.
    • 東□元稹 (1806) :『東海參譚』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.23-44.
    • 高倉新一郎 (1959 ) : 『蝦夷地』, 至文堂 (日本歴史新書), 1959