政治家には,「族議員」が存在する。
「○○族」と呼ばれ,「○○」には「大蔵」とか「道路」とか「文教」とかのことばが入る。
そして,「○○」には「"アイヌ"」のことばも入る。
岡田春夫,鈴木宗男,町村信孝,といった名が挙がるわけである。
実際,「北海道地盤の政治家」には,「"アイヌ" と無難にやっていく」「"アイヌ" を政略的に用いる」が含まれる。
そして,「"アイヌ" と無難にやっていく」「"アイヌ" を政略的に用いる」とは,《組織の幹部と懇意になり,組織が都合よく振る舞ってくれることの見返りに,"アイヌ" 施策を約する》立場になるということである。
「是非も無し」である。
ただ,この「是非も無し」は,大事を壊す。
政治家は,ファース・プライオリティを立てる。
そして,ファース・プライオリティを実現するためには,これに伴う犠牲は目をつぶるものであると定める。
しかしその政治家は,一つの個性・器量・限界である。
一つの個性・器量・限界が定めた「ファース・プライオリティ」と「目をつぶるもの」は,その個性・器量・限界の「主観」である。
そこで,犠牲にしたものの方が実はずっと大事なものだったりする。
国会採決の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案」(2008) は,歴史の改竄である。
これを提出したのは,鈴木宗男である。
鈴木宗男にとって,歴史改竄は「目をつぶるもの」になる。
"アイヌ"族議員は,<言論の自由>にとって困った存在になる。
アイヌイデオロギーがすることば狩り・言論封じに加担する者になるからである。
アイヌイデオロギーから「アイヌ差別者」と摘発される者が自党の中から出てきて,これを処分するということもあった。
そしてこの「摘発─処分」連係プレイが,アイヌイデオロギーをますます図に乗せることになる。
1. 岡田春夫 ( 岡田春夫)
|
衆議院予算委員会 (1973)
[岡田春夫]
もう一つは、北海道の問題でございますので長官に伺っておきたいのは、アイヌ民族の文化というのは非常にすぐれたものがありますが,たとえばユーカラの伝承などといって,文字がないものですから伝承しているわけですね。
これはアイヌ民族自身がいま残そうというので文字化している。
これなんかでも,自分の経費で、自分の負担で苦しいながらやっているわけですよ。
しかもウエベケレというのがあるそうです。
このウエベケレというのは、北海道の日高にあるアイヌ民族の研究家 が自費でやっている。
本にして五十巻になるそうです。
こういうものは、やはり厚生省にしても北海道開発庁にしても、自分のほうの所管外であっても,これは文部省になるかもしれませんが,こういうものには金を出して,重要な文化資産ということですから,ひとつ積極的に援助をするようなことも、北海道開発庁長官としても積極的な姿勢が私は望ましいのですが,この点を伺っておきたい。
‥‥‥
若干あなた勘違いがあるのですよ。
完成したんじゃない、いまやっているのです。
それは金田一博士の問題となりますと、アイヌ民族からは問題があるのです。
金田一博士をアイヌ民族が信頼したかどうかというのはまた別問題です。
知里博士の問題になるとまた別ですが、いまやっておるのは新しい問題です。
萱野 [茂] という人がやっている。
第一巻をいまようやく始めたというところです。
ですから、これは前のと全然違うのですから、ちょうど政務次官もおられまずから、ひとつお調ベいただいて,ぜひ補助をいただきたい。
|
|
|
岡田春夫 (1975), p.30
[貝沢正]
「 |
先生が誰もが省みもしなかった弱い立場にあるアイヌ問題を取り上げ、国政の課題として、昭和四十八年の通常国会から三度にわたって質問をされた。
国のアイヌ対策のお粗末さを追及した結果、政府の重い腰がやっとあげられたのだ。
先生を慕ったアイヌ青年の間には『岡田春夫と歩む会』を発足させ活動に入ろうとする新しい動きが出て来ている」
|
|
|
2. 鈴木宗男 ( 鈴木宗男)
|
砂澤陣 (2016), pp.136-139 から抜粋
[鈴木宗男とアイヌ協会の懇談テープ (2009-10)]
協会幹部
「 |
我々に (国からの) 資金援助をお願いしたい。
国連でもそのように言っておりますから。
踊りとか唄の保存会とか、アイヌ協会本部への助成も考えると、2億円ぐらい必要じゃないか」 |
| |
「 |
政府の総合政策室に協会事務局長を入れてほしい。
国では、国家公務員でないと入れないなどと訳の分からないことを言っているが、だったら (事務局長を) 国家公務員にすればいい」 |
| |
「 |
札幌市埋蔵文化財センターの遺跡研究や調査活動にアイヌ民族を採用していただきますようお願いします」 |
| |
「 |
札幌市職員にアイヌ民族の特別雇用枠を制度化するよう要望いたします」 |
| |
「 |
札幌アイヌ文化交流センターの施設管理ですが、全面的な事業委託の実現を要望したい」 |
| |
「 |
ピリカコタンの隣にアパート方式で30世帯ほど住めるようなマンションを建てて住まわせてください」 |
| |
「 |
(国側は当初、審議会のメンバーを) 9人でやりたいと、3人はアイヌ、3人は官房長官ら行政職、あと3人は有識者だと、こういう驚くことを言っていたんですが、そんなことでは私たちはもう納得できません」 |
| |
「 |
(望ましいメンバー構成は) アイヌ民族5人と、私たちが推薦する有識者5人。
あと5人は国が推薦する有識者でもどうぞ入れてくださいと、この15人でお願いしますというのが、アイヌ民族の要望でございます」 |
鈴木宗男
「 |
(望ましいメンバー構成については) みなさんが言った5人、5人、5人。その説明は分かりやすいと思いますからやっていきたい」 |
| |
「 |
(遺跡研究などへのアイヌ採用については) 歴史的な意昧があるんだから、ここはすごくアピールしていい話」 |
| |
「 |
(市職員への特別雇用枠については) 最初から職員だと試験とか何とかあるから、アイヌの専門家ということで、嘱託でまず入らせる。
入ってしまったら、逆に相手の急所をつかまえる」 |
| |
「 |
(事業委託の要望については) 市側は財源の持ち出しがあるものですから躊躇していると思いますけど、それは特別交付税で面倒みるとか何とか、知恵の出し方があると思います」 |
| |
「 |
(活動費については) いろんな会合なり出張で、みなさんが自前で行くっていうのも大変ですね。
そういった活動費については、国は国で役割があるし、北海道もそれなりに負担してもらわないと困りますね」 |
|
|
|
アイヌ協会 (2017)
新たな法律制定については、アイヌ政策推進会議が開催された昨年10月1日も、総理官邸において国が主体となった総合的な政策の根拠となる法律の制定のための要望書を高橋知事と並んで菅官房長官に手渡したところですし、本年3月28日にも鈴木宗男新党大地代表のご配慮により、菅義偉官房長官に直接お会いし、改めて要望書を手交し、立法への検討に着手したいとの前向きな意向を伺ったところです。
|
|
引用文献
- 衆議院予算委員会 (1973) : 第71回 衆議院 予算委員会第三分科会 昭和48年3月5日 第3号,1973.
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/071/0388/07103050388003.pdf
- 岡田春夫 (1975) :『大衆にすべてを捧ぐ──50年度国会報告』1975
ムンクジルガラ「アイヌの海外交流と民族の復権──1970年代のアイヌ中国訪問がもたらしたもの」, 和光大学現代人間学部紀要, 第3号, 2010. pp.117-135.
で引用のもの (p.132) をさらに引用
- 砂澤陣 (2016) :『北海道が危ない!』, 育鵬社, 2016
- アイヌ協会 (2017) :「理事長メッセージ」, アイヌ協会HP
|