Up 「アイヌモシリ」立論 作成: 2017-01-21
更新: 2017-01-21


      萱野茂 (1980), pp.193-195
    アイヌはアイヌ・モシリ、すなわち〈日本人〉が勝手に名づけた北海道を〈日本国〉へ売ったおぼえも、貸したおぼえもございません。 しかし今となって、北海道に住んでいる〈日本人〉を〈日本本土〉へ帰れと言っても、そう簡単に帰れるものでないことは承知しています。 そんな実現不可能なことをわたしは言いません。
     わたしは、今このアイヌ・モシリに住んでいるわたしたちも〈日本人〉も一緒になって、このアイヌ・モシリの自然を守りたい。 今まで何かと差別されてきた先住者のわたしたちアイヌの生活の向上のために、思い切った政策を実行して欲しい。
     家を不自由している人には家を建てて入れること。
    向学心に燃えても家庭の経済的事情で進学できない人には国費を出してやること。
    数の少ないアイヌだけでは国会議員、道会議員を選出することができないので、それを選出できる法律や条例をつくること。
    アイヌ語を復活させ、アイヌ文化の大切さを教えるため、希望する地域にはアイヌ語教育をする幼稚園、小・中学校、高校、大学を設置する。
    そして、これらに必要な経費は国や道が出す。
    元々の地主に今まで払わなかった年貢を払うつもりで出すこと‥‥‥
     少数民族の問題について、国はもちろん道も市町村もあまりにも理解がないと言いたいのです。
    お隣りの中国では、少数民族の朝鮮族の住んでいる地域ですとパスの停留所の標識などは共通語の中国語と並べて朝鮮語でも書いてあります。 中国国内で五十四種族の少数民族の自治区はすべてそのように併記されているのです。 (実際、私は、延辺の朝鮮族のところへ行って見てきています。)
    昭和53年の夏、アラスカのボインパロー市へ市長からの招待で行ってきましたが、同市のエスキモーの自治区では、共通語は英語でしたが、小学校ではエスキモー語を教えていました。
    細かいことは言いませんが、現在、世界的に少数民族問題が真剣に考え直され、その民族が持っている文化や言語を絶やさない努力がされています。 そういう世界の趨勢に日本も遅れないように本気で取り組んで欲しいのです。
    アイヌは好き好んで文化や言語を失ったのではありません。
    明治以来の近代日本が同化政策という美名のもとで、まず国土を奪い、文化を破壊し、言語を剥奪してしまったのです。
    この地球上で何万年、何千年か、かかって生まれたアイヌの文化、言語をわずか百年でほぼ根絶やしにしてしまったのです」


      旭川アイヌ協議会 (2009)
    2009年6月25日
    内閣総理大臣  麻 生 太 郎 様
    内閣官房長官  河 村 建 夫 様
    アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会
    座  長    佐 藤 幸 治 様

              旭川アイヌ協議会     
              アイヌ・ラマット実行委員会

     ‥‥‥
    (1)日本政府及び天皇は、アイヌモシリ植民地支配・同化政策の歴史的な責任を認め謝罪を行うこと。
    (2)日本政府は、先住民族アイヌの生得の権利、とりわけ土地、領域、資源を奪ってきた賠償として5兆円を支払うこと。また、アイヌ民族に対する強制移住、強制連行、さらに虐待・虐殺などの人権侵害についてアイヌ民族の関与する被害の調査の上、その歴史的責任に対して賠償を行うこと。
    (3)アイヌ民族に対して、アイヌモシリの国有地・公有地と天然資源を返還し、漁業権・狩猟権・伐採権などの権利回復を行うこと。いわゆる「北方領土」に関してアイヌ民族の自決権を認め、その他のものも含め原状回復の困難な土地・天然資源の利用に関しては国の責任で代償措置をとること。
    (4)国会と地方議会にアイヌ民族の特別(民族)議席を設けること。
    (5)日本政府は、アイヌ民族が自主的に運営を決定し、幼児期から高等教育までアイヌ語を中心にアイヌ文化・歴史等を学べる教育機関を設置してその財政的保障を行うこと。日本の公教育機関で、アイヌ民族の言語を学べ、アイヌ民族の立場からその歴史と文化への正しい理解を醸成する系統的な教育カリキュラム・制度を保障すること。
    (6)全国のアイヌ民族の実態調査を行い、アイヌ民族の先住権・自決権に基づく施策を保障するアイヌ民族法を制定すること
    (7)日本政府は、アイヌ民族の墓地を荒らした遺骨収集の経緯を調査するとともに、その返還を速やかに行うこと。当該(返還)地域に納骨堂を国の責任で建設すること。