Up 4月28日 作成: 2024-12-09
更新: 2024-12-11




      『菅江真澄全集 第2巻』(未来社, 1971). p.30
    相沼(爾志郡熊石町)といふ浦に泊もとめんとて、いかりかけており、
    ひんがしの海白府(上磯郡福島町)の泉郎にて、阿部たれといふもの、鯡の魚のわざすとて、この浦にいとなみをる苫小屋に宿かりつ。
    こゝかしこに、いさりたくかと見渡ぱ、立ならぶ丸屋形(マロヤカタ)のうちには、人あまた、ほたたき居ならびて、三の緒(三味線)かいならし歌うたふ。
    陸小屋の窓よりも、ひまもる灯の光など、河辺の螢よりもしげう。
    この火かげにさしうかゞへば、軒にいと高う木を立て、大口魚(タラ)の肉をほじしにすとて、さきづらねかけたる魚屋(ナヤ)とて、その臭さしのびがたく、夜はいたく更たり。