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藤田紘一郎 (2002), pp.226,227
ゴキブリと同様、ダニも日本人に嫌われている。
そして、今、世の中はこのダニのことで騒がしくなっている。
ある化粧品会社と一部の皮膚科医たちが言いはじめた「顔ダニ」のことである。
顔ダニはヒトの顔の皮膚の中に棲んでいる一種の寄生虫で、本名「ニキビダニ」という。
赤ちゃんを除く、ヒトには必ず存在する。
毛嚢の中に、二匹から三匹棲んでいるので、一人あたり、顔の中に 200 万から 300 万匹いるという計算になる。
彼らは、街を歩いているギャルたちを次々とつかまえては、鼻の横の皮膚を圧迫して、毛嚢から皮脂を出し、その固まりを顕微鏡に映して見せた。
そこには、クニャ、クニャと活発に動いている顔ダニが見えたのだ。
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あなたの顔には、こんな気味のわるいダニがいるのですよ。
寝ている時、このダニが顔の表面に出てきて、皮膚を荒らしています。
この化粧品はそんなダニを殺して、皮膚をきれいに保ちます」
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と、自分たちの化粧品を宣伝したのだ。
確かに顔ダニの数が多すぎると、ニキビをつくったり皮膚を荒らすことはある。
しかしダニをすべてなくすことはできない。
このような宣伝文句を真にうけてダニをすべて殺そうとしたなら、それは明らかな誤解なのだ。
この顔ダニがいなければ私たちの顔は納豆のようにベタベタし、ナメクジのようにヌルヌルして、どうしようもなくなるのだ。
この顔ダニは、顔の皮膚の脂肪を食べてくれるから、私たちの顔はツルツルした状態でいられるのだ。
このダニは誰でもがもっている「共生虫」である。
毛穴の奥深く潜んでいて、せっせと皮脂腺から分泌された脂肪性の分泌物を処理してくれている大切な生きものだ。
このダニがいないと、皮膚の脂肪代謝がうまくいかなくなる。
このダニは皮膚常在菌と同じような働きをしているというわけだ。
ニキビダニの棲息部位
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- 参考/引用文献
- 藤田紘一郎 (2002) :『バイ菌だって役に立つ──清潔好き日本人の勘違い』(講談社+α文庫), 講談社, 2002.
- 参考 Webサイト
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