Up 銀行 : 要旨 作成: 2020-11-29
更新: 2020-11-29


    通貨Xは,これに対し「Xを扱う銀行」の概念が立つ。


    銀行は,ひとから預金を集める。
    併せて,金をひとに貸す──これは「ひとの債務を買う」と言い換えられる。
    預金と貸付の関係は,「全貸付額は,全預金額に見合うものでなければならない」である。

    債務者からは,利息を取る。
    預金者には,利子を払う。
    これが,銀行の収支である。
    銀行は,この収支から利益を生もうとする商いである。


    「全貸付額は,全預金額に見合うものでなければならない」は,恣意的である。
    また,金は「紙幣・金属硬貨」を意味しない。
    金は,記号である。
    電子決済が普通になっているいまの時代には,これは自明のことになる。

    銀行は,貸付において,金を造っていることになる。
    いまの時代は,金はコンピュータのキーボードを叩いて造られる。
    金は,キーストロークである。

      銀行の金造りは,「信用創造」と呼ばれているが,この語は "money creation" の訳である。


    ひとが銀行に預金することは,自分の金を他人に与えることである。
    ひとはふつう,自分の金を他人に与えることはしない。
    それは,自分の金を無くしてしまう行為だからである。
    銀行の場合,ひとは<与える>を<預ける>だと認識している:
      「自分の金は要求すればいつでも戻ってくる」
      「預けている間,利子を受けられる」
      「銀行を自分の金庫にしておけば,安全」
    この認識を,「信用」と謂う。

    「金」も「信用」も,幻想である。
    ひとは,<賭け>として,この幻想ゲームに入る。


    通貨Xは,これに対し「Xを扱う銀行」の概念が立つ。
    中銀通貨だと,よほどの事情がなければ,これを扱う銀行が現れる。
    日本人の「銀行」が日銀通貨 (円通貨) を扱う銀行であるように。

    P2P通貨Xには, 「Xを扱う銀行」の概念が立つ。
    例えば, 「ビットコイン」に対し「ビットコイン」を扱う銀行が現れてよい。
    「ビットコイン」を扱う銀行が現れないとしたら,それは「ビットコイン」が通貨の閾に達していないということである。

    実際,P2P通貨で通貨の閾に達するものを実現することは,設計的に無理である。
    実用的な非中銀通貨が現れるとしたら,それは民間のグローバル企業が運営する世界通貨ということになる。
    例えば,「Apple が運営する世界通貨」だと,ひとはこれを信用して使いたくなるかも知れない。