Up 国の「倒壊」構造 作成: 2024-11-11
更新: 2024-11-11


    日本は,輸出・輸入で国が成り立っている。
    その輸出・輸入は,グローバリズムで成り立っている。

    グローバリズムは,国の間の経済格差で成り立っている。
    即ち,豊かな国が貧しい国の1次産業と安い労働力を利用する。

    貧しい国の1次産業を利用する仕方は,1次産品を安く買い叩いて自国に輸入する。
    安い労働力を利用する仕方は,そこに工場を置いて生産する。
    人件費が安い分,製品の価格を安くできる。
    これを豊かな国に輸出する。

    貧しい国はさんざんのように見えるが,1次産業に指導が入ることで生産性が高まり,そして工場が置かれることで工業化が進む。
    総体的に豊かになり,教育水準も上がる。
    そうなると,豊かな国々は今度は,その初め貧しかった国を自国製品のマーケットにしようと競争を始める。
    こうして,貧しい国は躍進し,急速に豊かな国に追いつく。
    さらにこれを追い抜く勢いになる。


    しかしこれは「下剋上」模様とはならない。
    この時代は,豊かな国になったら,それでお終いである。
    どうして?

    豊かな国は,都市化・少子化の国になる。
    都市化は,1次産業の衰退である。
    どこの国も1次産業を衰退させた状況では,1次産品の輸出・輸入が回転しなくなる。
    少子化は,少数の生産年齢層が多数の高齢者を扶養する構えである。
    したがって,国民は貧困化する。
    貧困化は,消費の沈降である。
    そして少子化なので「新天地」も必要としない。──そもそも「新天地」も既に無くなっている。
    こうしてグローバリズムが崩れる。
    各国は自閉し,衰退の一途となる。

    要点:国が豊かになるとは,内側から崩れていくということ。


    国の「少子化対策」は,つぎの前提に立っている:
     「 人は自分の子どもが欲しいが,
    経済的に苦しいので子どもをもたない。」

    しかし,人が子どもをもたなくなるとき,その理由は「デメリットが大きい」である。
    貧しい国は,子どもをもつことがメリットになる。
    そのメリットは,「役に立つ」である。
    一方,豊かな国の子どもは,「役に立たない」。
    その「役に立たない」ものを,約20年間養わねばならない。
    これはなかなかたいへんであり,子どもが手のかかる年齢期は,親が自分の都合を犠牲にしながらの養育になる。

    日本の「女性1人当たり出生数」は現在 1.3 くらいであるが,これがいまの「妥協点」というわけである。
    人口を維持する数字は 2 以上だから, 1.3 はなかなかの数字である。
    そしてこの妥協点は,降下の一途になる。
    妥協点の降下は,生産年齢者1人当たりの負担高齢者数の増加と「正のフィードバック」関係になるからである。
    妥協点の降下は,降下スパイラルになる。



    こうして,豊かさで横並びするようになった国々は,つぎは内側からの崩壊のスパイラルに入っていく,。
    ただし国の滅びは,ヒト (ホモ・サピエンス) の滅びとは別。

    国とは,安全保障システムのことである。
    国の内側からの崩壊とは,安全保障システムの崩壊のことである。
    この崩壊の後は,ヒトが「安全保障システム無用」で生きるだけのことである。
    実際,数を減らしていくヒトは,この流儀で生きていくことになる。


    国は,安全保障システムを保てない。
    しかし国は,「生活保護」や「防災」にさらに金を支出することを宣言する。
    なぜこんなふうになるか?
    政治はポピュリズムだからである。

    ポピュリズム政治とは,金が無いのに金をばらまく政治である。
    なぜこれが可能なのか?
    金は実体の無いものだからである。

    国は, 「赤字国債」 「’国の借金」のことばを用いて金造りすることを,覚えた。 ──金造りは,昔は紙幣の印刷,いまはコンピュータのキータッチ。
    裏付けのない金額を予算にのせ,市井に流すことを,常習癖にする。

    これに国民も染まる。
    金は天から降ってくると思うようになる。
    何かと交付金を要求し,これに麻痺する。。


    裏付けのない金額を市井に流すとどうなるか?
    ひとは意識していないが,金の価値が下がる。
    すなわち,物価が上がる。
    これは,ひとが貧乏になるということである。
    ひとはまだ意識していないが,だんだんと自分の貧乏がはっきり現れるようになる。


    国の倒壊を見られるのは,以前ならまだだいぶ先のことと思われていた。
    しかし,事態は高速で進行している。
    一般に運動は,スパイラルの構造になったら急速に進行する。
    国の倒壊をかなりはっきりした形で見られるのは,そんなに先ではないかも知れない。