Up 国民は輸入米,国産米は外国人に 作成: 2024-09-22
更新: 2024-09-23


    米の輸入は,ミニマム・アクセス (MA) と高関税の二つの枠で行われてきている。
    貿易自由化の流れに対し,これを用いて米輸入を制限してきた。

    「ミニマム・アクセス」とは,文字通り,「ちょっとだけよ」である。
    総量 年間77万トンで,内訳は加工用・海外援助用・飼料用。
    主食用を含めないのは,含めたら国内農家に対する主食米生産調整政策と矛盾するからである。


    しかし米輸入の制限は,もう無理になっている。
    なにせ日本は,自由貿易で生かされる体をつくってしまった国である。
    自由貿易のサークルに入る者は,いいとこ取りは許されない。
    TPP を「堤防の蟻の一穴」として,これまでの米輸入制限は一気に崩れていくことになる。

    国会議員も,「改革」を自任して「規制緩和・聖域の廃止」を唱える者が増えていく。
    いまは大都市地盤の議員が多数派になっているが,彼らは地方とのしがらみが無い分,「米作=聖域」を切っていくことができるのである。
    世の中が「一票の格差是正」にすっかり洗脳されてくれたおかげである。


    国民は,外中食を通じて,「それなりの品質」米にもうすっかり馴れている。
    彼らは,安い輸入米に向かう。

    念のため:
    国産米は,価格では輸入米に対抗できない。
    国産米の高価格と輸入米の低価格は,経営規模の差が理由だからである。
    「EU は日本の9倍,米国は100倍,豪州は 2,000倍近く」(農水省「ミニマム・アクセス米に関する報告書」,2009. p.4),


    国産米は,品質 (ブランド力) で生き残りを賭けることになる。
    国民は輸入米に向かうので,活路は外国人になる。
    ひとつは「外国人の日本食嗜好」:
    • 海外富裕層向けの輸出
    • 国内高級日本食店への販売
    もう一つが「地元直販」──仲介者が無い分,価格を抑えられる。


    こうして,大局では「国産米は外国人に,輸入米は国民に」の逆転現象になる。
    米農家は淘汰され,「米農家の老齢化」が言われているところは一掃される。

    「米農家の老齢化」が言われているところの一掃は,特に中山間地域の消滅を含む。
    「観光で地域の存続!」も,観光は水物であるから,長続きはしない。
    都会の嫌がる施設を誘致して交付金で存続しようとする地域もあるが,それは「存続のための存続」であり,そこに生活は無くなる。