- 労働者供給,物流,興業
- 組織力学
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宮崎学『山口組と日本』, pp.253,254.
そして、これらの文面 [神戸山口組発足の「挨拶状」と六代目山口組司忍組長の「手紙」] から、私はもはやヤクザに肉感的な親子関係が希薄になってしまったことを再認識した。
親分、子分、兄弟分といった疑似家族の「心情」よりも、組織が優先されている印象を受けたのだ。
いい悪いの問題ではない。組織が大きくなることで、機能が家族から企業へと変容を遂げただけである。
巨大組織が抱えざるを得ない宿命なのだろう。
そして、古き良きヤクザを破壊したのは、過剰な暴力団排除であり、警察である。
本来のヤクザとは、地元の顔役であり、全国制覇など目指していなかった。
ところが、警察の弾圧により、ヤクザとりわけ山口組はより強大にならざるを得なかった。
1960年代の頂上作戦などの弾圧には勢力を拡大するしかなかったのである。
その結果、「家族」や「哀愁の結合体」としての組織ではなく、より強大で効率化された組織となっていったのだ。
「今どき、枝の若い者の顔と名前が一致する親分がどれだけいますかね。どんなに多くても300人が限界。1000人なんて、もう『ファミリー』とは呼べませんよ。だから警察もヤクザを企業と同様に考えて、親分に対して『使用者』なんて概念を使ってくるんです」
すでに故人となった、ある親分の言葉である。
「本来、ヤクザはそこまで大きくなる必要はなかった。地元をしっかり守っていればよかったんです。でも、大きくさせたのは警察ですからね。誰だって、追い込まれれば強くなろう、勢力を広げよう、と思うやないですか。そして、大きくなってしまったら、今度は組織防衛だけに走ることになる。組員の規律をやたら厳しくしてね。それはもうヤクザとは違いますよ。立派なビジネスの組織です」
少なくとも山口春吉初代は全国制覇など夢にも思わなかったはずだ。
そして、山口組は弾圧すればなくなると思っていた警察の思惑にも反して、巨大化、寡占化を続けてきた。
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- 参考文献
- 宮崎学
- 『山口組と日本──結成103年の通史から近代を読む』(祥伝社新書), 祥伝社, 2018.
- 田岡一雄『山口組三代目 田岡一雄自伝』(1〜3), 徳間書店, 1973,1974.
- 参考Webサイト
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