Up 学会論文 作成: 2015-02-21
更新: 2015-02-21


    大学院生は,研究職 (大学教員) を目指している場合,在籍中に論文を業績にしていかねばならない。
    このとき,業績としてカウントされる論文は,レフリー論文である。
    大学院生が論文をつくるとき,その論文は学会誌にのせることが目指されている。

    「論文」と「学会誌に載る論文」は,別の概念になる。

    学会誌に載る論文をつくるためには,学会の本流に乗らねばならない。
    学会論文は,「先行研究の積み上げ」が要件になる。
    論文規程の「引用・参考文献」は,先行研究を記すところである。
    これに対応できるためには,本流に乗らねばならない。──本流に乗らないとは,「先行研究の積み上げ」の形をつくれないいうことである。

    学会論文というと,「ホットな問題に対しわれもわれもと参入し,論文産出の螺旋運動が現出」のイメージがある。
    数学教育学は,こうはならない。
    「ホットな問題」が出てくるのは,未知が圧倒的に多い分野である。
    数学教育には,未知はない。
    ぜんぶ現れている。
    現れていることに対しどんな物語をつくるかが,数学教育学である。

    そこで,論文の「独自性」は,メジャーな問題で競争して勝つではなく,《先行研究の存在する分野であって,参入者があまりいないニッチに,自分を立たせる》の形でつくるようになる。
    実際,ニッチでは,自分が専門家になるわけである。
    そして,先行研究を立てて専門家然とした者は,批判の余地がない。

    「専門分野の細分化」のメカニズムは,これである。
    このメカニズムを知ってこれを戦略的に用いれば,「学会誌に載る論文」づくりは容易なものになる。 ──コツ・レシピでつくれるふうになる。

    本流が体質的にどうしても合わない者は,どうするか?
    「体質に合わない」を自分の特質とし,これを得に転じていくのみである。
    こうして自分の論文を学会論文にしていくのみである。

    論文をつくる者の肝心は,自分の論文づくりを自覚的に定め,そして覚悟することである。
    自分の論文スタイルは,数学教育の系で自分が生きるスタイルを定める。