Up 無常 作成: 2018-08-16
更新: 2018-08-16


    文明は,得と失が表裏になる。
    得が大きければ,失も大きくなる。
    得のみを残せないことは,紙の表と裏の一方のみを残せないのと同じである。

    ひとは,規範 (道徳・行儀) や制度の導入を以て,失を無くそうとする。
    この結果は,失を減らしたぶんこれまでの得が減り,新しい得ができたぶん新しい失が現れる,というものである。
    規範・制度は,己の無理構造によって(ほころ)ぶ (自己解体)。


    新しい規範・制度の導入を,「改革」という。
    「改革」は,規範・制度のライフサイクルを経緯する。
    「改革」は,早晩厭きられる。
    ひとは「改革」を捨て,元に戻る。
    「改革」は,元の木阿弥で終わる。

    一方,ひとは,世代忘却する。
    現前に失を見て,「改革」を企てる。
    こうして,ひとは,「改革」を企てると捨てるを繰り返す。

    この<行ったり来たり>の繰り返しは,無駄というものではない。
    生き物の<生きる>は<絶えず変わる>であり,動物であれば<絶えず動く>である。
    ひとは,絶えず動いていなければならない。
    このとき,自動的な<絶えず動く>があれば,ありがたい。
    そしてその自動的<絶えず動く>の最も単純な形式が,<行ったり来たり>なのである。

    ひとが「改革」を企てると捨てるを繰り返すのは,これが自動的な<絶えず動く>になってくれるからである。
    そしてこの<行ったり来たり>は,新陳代謝を兼ねる。