Up 「人権・倫理」のイデオロギー 作成: 2011-02-19
更新: 2011-02-19


    「人権・倫理」は,イデオロギーの好餌になりやすい。
    そのイデオロギーは,「抑圧者からの被抑圧者の解放」のイデオロギーであり, 1990年の社会主義圏崩壊の以前であれば,「社会主義政権実現の政治闘争・勝利・社会主義国家の樹立」を「解放」のストーリーにしていたところのものである。

    ただし,社会主義圏崩壊があり,そしていまは中国の人権問題を間近に見せられ,このストーリーを信じる者はもういない。 いまの「抑圧者からの被抑圧者の解放」のイデオロギーは,ストーリーから「社会主義政権/国家」を除いたところで,自らを立てるものになっている。

    「抑圧者からの被抑圧者の解放」のイデオロギーは,「抑圧者=悪者」を立てる。
    このイデオロギーが「人権・倫理」の授業をすれば,悪者論になる。
    「悪者の同定」「悪者の懲罰」「悪者の改心」が,内容になる。

    悪者論は,間違いである。
    単純思考が,悪者論をつくる。 単純思考をやってしまうのは,複雑思考が難しく,面倒だからである。 イデオロギーを択ぶのは,思考を簡単に済ませたいからである。
    これに対し,観念して複雑思考を自分に課すとき,学術に向かう。

    大学の科目は,学術指向である。
    「人権・倫理」の科目も,学術指向ということになる。

    そこで,「人権・倫理」の科目は,この科目の回収にとりかかるスタンス二つを,同時に警戒していくものになる。
    一つは,小学校「道徳の時間」大学版への回収である。
    そしてもう一つが,「抑圧者からの被抑圧者の解放」のイデオロギーへの回収である。