Up 「倫理」のことばの使い方 作成: 2011-02-11
更新: 2011-02-11


    「倫理」のことばの用い方 (用いる条件と形) を考えるときは,「道徳」と比較するのが便利である。

    「道徳」は,小学生レベルで「よい・わるい」を論じて収まる程度の問題を扱うスタンスと考えればよい。
    これに対し「倫理」は,もっと知力のレベルが上がったところでないと論じられない複雑な構造が入ってきて,そして「よい・わるい」の話ではなくなるけれども,ことばとしては「よい・わるい」を使うことになる,そんな問題を扱うスタンスである。

     例
    • 経済行為は,法に触れないぎりぎりまで自由であり,そしてこの限りで社会に大きな被害を与えることも自由である。 これに対し「よい・わるい」を問題にするスタンスは,倫理である。
    • ある大学が,「戦略的」な課程をつくり,その後教育的に問題のある課程であることがわかってきたが,引っ込みがつかないので,そのまま学生をとり続けているとする。学生被害は明瞭な形をとらないので,行政指導は馴染まない。 これに対し「よい・わるい」を問題にするスタンスは,倫理である。


    「倫理」には,つぎの考え方も見える:
      力をもつ者には,その力の発動を自制してもらう必要がある。 (「法に触れない限り力の発動は自由」となったら,その力は破壊的なものになるから。)
      そして,「倫理」の考え方によって,自制してもらう。
    この場合「倫理」は,力をもつ者がもっているべきものになる。
    ──翻って,力のない者にとっては,もっていても発揮する場の無いものである。