Up 顧客主義から理知力・モラルの劣化へ 作成: 2007-07-01
更新: 2007-07-01


    いま,社会全般に理知力・モラルの劣化が進行している。
    この劣化は,偶然のことではなく,理由がある。

    状況のとらえとして一番最初に押さえておくべきことが,この現象とこれの理由である。 なぜなら,学生の問題からはじまって行政の問題まで,いま国立大学が抱える問題はいずれもこの「理知力・モラルの劣化」と関係しているからである。


    理知力の劣化とモラルの劣化は,同じことである。
    すなわち,「世界認識の低次元化」が,これの内容。

      したがって,理知力の方を閑却したまま「道徳教育」を唱えるようなのは,ナンセンス。

    「世界認識」は,複雑系のとらえである。 そしていま,このとらえが低次元化している。
    複雑系のとらえは,もともと単純化/別物化の行為に他ならないが,ここで「低次元化」と謂う意味は:

      「単純化/別物化の意識がないことと相俟って,
       単純化/別物化がさらに低次元化している。」


    「低次元」の意識は,高い次元を知ることではじめて持てる。
    逆に,高い次元を知らなければ,いまの次元を「低次元」とは思わず,これに自足する。
    社会全般における理知力・モラルの劣化,世界認識の低次元化は,<自足>の様態である。


    自足が壊される契機は,「高い次元」が他から示唆されること。
    しかし,いまは顧客主義の時代。 個人は「お客様」扱いされ,叱られることがなくなった。 「高い次元」を示唆されることがなくなった。


    ここでのまとめ
    1. 顧客主義
    2. 叱られない=「高い次元」を示唆されない
    3. 低次元に自足
    4. 理知力・モラルが育たないままになる