Up はじめに 作成: 2011-04-26
更新: 2011-04-26


    教員養成課程の科目には,教科専門科目がある。 伝統的な教員養成課程では,学生はどれかの教科を専攻し,教科専門科目を履修する。 数学科であれば,専門数学の科目を履修する。 この科目を授業するのは,数学を専門とする教員である。

    教員養成課程が安定的に運営されている期には,このシステムは問題意識に上ってこない。 逆に,課程再編のような動乱期には,このシステムが否応なく問われてくる。 すなわち,つぎのように:
      教員養成課程における専門数学の位置づけは?
    この位置づけになる専門数学の在り方は?
    この在り方に対し,現実はどのようか?

    特に,課程再編を主導する考え方が総合主義であって,従来型教科中心の枠組を壊していくケースでは,教員養成課程における専門数学の意味,専門数学担当教員の存在理由が,根柢的に問われることになる。 すなわち,従来型の安定期なら
      算数・数学科の教科専門性は,専門数学科目によって陶冶される。
     専門数学担当教員の布陣は,この陶冶にあたるためである。
    と言ってそれで済ませられたものが,今度は
      そういう断定になるのは,どうして?
    ほんとうにそうなっているのか?」」
    が畳み掛けられることになる。

    著しくは,課程再編が「小学校教員養成専一大学」の起ち上げに及ぶ場合である。
    小学校教諭1種免許では,専門数学科目が入るカテゴリーの「教科又は教職に関する科目」は,最低修得単位数が10である。 そしてこの数字は,「各教科から授業科目一つを出せばよい」というものである。 伝統的な教員養成課程に見る専門数学担当教員の布陣は,この数字の上では,まったく必要のないものになる。

    この状況は,将来的にもまた現時点においてさえも,決して極端なものとは言えない。 実際,「法人化」になって経営が経済的に苦しいいまの国立の教員養成系大学・学部にとって,構造的にどうしても不採算部門になってしまう中学・高校教員養成は捨て,小学校教員養成に特化するというのが,気をそそられる方向の一つになる。

    本論考は,このような状況に際して,教員養成課程と専門数学の関係を改めて考察しようとするものである。