イデオロギーフリーの「気候変動入門」: 古気候再構築技術

鍾乳石の成長痕跡──石筍の成長縞

作成: 2022-01-10
更新: 2022-01-10

石筍の成長縞

狩野 (2012), pp.159,160

石筍の成長速度は，水の化学的条件と滴下速度に支配される．
方解石の沈殿反応を化学的に扱った Buhmann and Dreybrodt (1985) は，沈殿速度 (R) が滴下水の Ca²⁺ 濃度（mCa²⁺）に大きく依存するとした（式3）．
　　　　R = A ( mCa²⁺ ‒ mCa²⁺_eq）　（3）
ここで，mCa²⁺_eq は脱ガス後の pCO₂ 条件で水が炭酸カルシウムに飽和するために必要なCa²⁺ 濃度であり，A は pCO₂・滴下速度・水温の関数である．
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洞内大気の pCO₂ は明瞭に季節変化し，滴下水の化学的条件や沈殿速度に反映する。
洞内 pCO₂ の季節変化は，
　　1）土壌二酸化炭素の生産と
　　2）外気との換気
で生じる．

土壌での二酸化炭素は根の呼吸と微生物による有機物分解により生産され，夏期に増加し，石灰岩層を通過して洞内 pCO₂ を高める．
一方，多くの場合，換気は洞内の気温が相対的に高い冬期に活性化する.
相対的に比重が小さい洞内大気が，地下空間の上部につながる亀裂を伝って暖かい空気として吹き出すと，その代わりに，冷たく重い外気がより下部にある亀裂から洞内に侵入し，pCO₂ を低下させる．
2 つのプロセスはどちらも洞内 pCO₂ を夏に上げ，冬に下げるが，石筍の成長速度に与える影響は逆になる．
式3 を使って説明すると，土壌 pCO₂ の効果は mCa²⁺ の増加により夏にR を増加させ，換気の効果は mCa²⁺_eq の低下により冬にR を増加させる．
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2 つの効果が相殺されない場合，あるいは滴下速度に季節的変化がある場合，石筍の成長速度に季節変化が生じる．
これは，石筍に見られる縞組織を作る要因になる．
石筍を構成する方解石クリスタライトや繊維質アラレ石の結晶径や微小空隙の発達程度に反映されて，光学的に認定可能な年縞をつくる．

応用

Neff (2001)

The δ¹⁸O record from the stalagmite, which serves as a proxy for variations in the tropical circulation and monsoon rainfall, allows us to make a direct comparison of the δ¹⁸O record with the Δ¹⁴C record from tree rings, which　largely reflects changes in solar activity.
The excellent correlation between the two records suggests that one of the primary controls on centennial-to decadal-scale changes in tropical rainfall and monsoon intensity during this time are variations in solar radiation.

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Samples (826) for stable isotope measurements were drilled from the core by hand with an average sampling interval of 0.4 mm, yielding an average time resolution for the core of 4.1 years.
For the fastest growth interval (high-resolution interval), however, between 7.9 and 8.3mm yr-1, the resolution increases to 1.4 years.